不動産の売却査定で聞くべきヒアリング項目は、「物件の状態」「権利関係・ローン」「売主の事情」「販売条件」の4分野・12項目です。聞き漏らさなければ、根拠のある査定価格を出せます。媒介獲得の確率も上がります。
| 分野 | 聞く項目 | 具体的な質問例 |
|---|---|---|
| 物件の状態 | ①築年数・構造・面積・間取り | 「購入時の資料はありますか」 |
| 物件の状態 | ②リフォーム履歴 | 「いつ、どこを直しましたか」 |
| 物件の状態 | ③設備の不具合 | 「調子の悪い設備はありますか」 |
| 物件の状態 | ④告知が必要な事項 | 「雨漏りやシロアリはありましたか」 |
| 権利関係・ローン | ⑤名義人と共有者 | 「名義はどなたですか」 |
| 権利関係・ローン | ⑥相続登記の状況 | 「名義の変更は済んでいますか」 |
| 権利関係・ローン | ⑦ローン残債 | 「ローンは残りいくらですか」 |
| 売主の事情 | ⑧売却理由 | 「売却のきっかけは何ですか」 |
| 売主の事情 | ⑨希望価格と最低ライン | 「いくら以上なら売りますか」 |
| 売主の事情 | ⑩売却期限と住み替え先 | 「いつまでに売りたいですか」 |
| 販売条件 | ⑪他社査定と媒介の希望 | 「ほかに何社に頼みましたか」 |
| 販売条件 | ⑫近所への配慮・内覧可否 | 「近所に知られたくないですか」 |
なぜ売却営業ではヒアリングが重要なのか?
査定価格の根拠も、販売の作戦も、売主から聞いた情報で決まるからです。聞き漏れがあると、査定の説得力が落ちて媒介を他社に取られます。さらに、引渡し後に売主が責任を問われるトラブルにもつながります。
査定価格の根拠は売主からの情報で決まる
机上査定は、登記情報や近くの成約事例から出す目安です。リフォーム歴や不具合は、売主に聞かないと分かりません。聞いた情報を査定書に入れると、価格の理由を説明できます。
聞き漏れが契約不適合責任のトラブルにつながる
売った物件が契約の内容と違うと、売主は買主から修理や代金の減額などを求められることがあります。これを契約不適合責任といいます。雨漏りや設備の故障を事前に聞き、契約書や物件状況報告書に書いておけば、トラブルのリスクを大きく下げられます。
【要確認:民法は改正される場合があります。法務省のサイトで最新情報をご確認ください】
売主は担当者への信頼で依頼先を選ぶ
ある分譲会社が、中四国・九州・関西エリアで過去5年以内に住まいを仲介で売却した200人に聞いた調査があります。依頼の決め手は「担当者の知識・提案力・人柄への信頼」が24.5%(n=200)で最多でした。「査定価格の高さ・根拠への納得感」は13.0%(n=200)です。売主は価格の高さより、知識と提案力のある担当者を選んでいます。提案の材料になるのが、ヒアリングで集めた情報です。
(引用元:穴吹興産株式会社「不動産売却時の仲介会社選びに関する調査」)
物件の状態について何を聞くべき?
築年数・構造・面積などの基本情報、リフォーム履歴、設備の不具合、告知が必要な事項の4つです。とくに告知が必要な事項は、聞き漏らすと契約後のトラブルに直結します。
建物の基本情報(築年数・構造・面積・間取り)
登記簿謄本や購入時の資料があれば、聞き取りの時間を短くできます。マンションなら管理費・修繕積立金の金額も一緒に確認します。
リフォーム履歴と設備の不具合
「いつ・どこを・いくらで」直したかを聞きます。工事の領収書や保証書があれば、査定でプラスの材料になります。給湯器・エアコン・水まわりなど、調子の悪い設備も聞いておきます。
雨漏り・シロアリ・境界など告知が必要な事項
過去の雨漏りやシロアリ、境界のもめごとは、売主から言いにくい項目です。こちらから質問します。「直したので問題ない」という内容も、時期と工事内容を記録します。
権利関係・ローンで確認すべきことは?
名義人・共有者・相続登記の状況と、住宅ローンの残りの額を確認します。ここを後回しにすると、「名義が違って売れない」「残債を返せない」と販売直前に止まります。
名義人と共有者・相続登記の状況
面談の相手が名義人とは限りません。夫婦共有や親名義の物件は、全員の売却の意思を確認します。相続した物件は、名義の変更(相続登記)が済んでいるかを聞きます。2024年4月1日から相続登記は義務になりました。相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請が必要です。2024年4月1日より前に相続した不動産も対象です。
(引用元:法務省「相続登記の申請義務化について」)
【要確認:不動産登記法は改正される場合があります。法務省のサイトで最新情報をご確認ください】
住宅ローン残債と抵当権の有無
ローンの残りの額と借入先の銀行を、返済予定表で確認します。売却代金で返し切れるかが、売れる価格の下限を決めます。
残債が査定額を上回る場合の確認ポイント
残債が査定額より多い場合は、足りない分を手元資金で払えるかを聞きます。払えない場合は、住み替えローンや任意売却も選択肢になります。
売主の事情と希望条件をどう引き出す?
売却理由・希望価格・売却期限の3つを、雑談から少しずつ聞きます。最初から「なぜ売るのですか」と聞くと、売主は身構えます。
売却理由を深掘りするタイミングと聞き方
住み替え・相続・離婚など、理由で売り方は変わります。物件の確認が終わり、会話がほぐれてから聞くのが基本です。「差し支えなければ」と前置きすると答えてもらいやすくなります。
希望売却価格と最低ラインの把握
希望価格と「これ以下なら売らない」価格を分けて聞きます。2つの差が分かると、値下げの相談がしやすくなります。査定額と希望価格に差がある場合は、成約事例を見せて説明します。
売却期限と住み替え先・引渡し時期
「いつまでに売りたいか」で、売出価格の付け方が決まります。住み替えの場合は、新居の決済日と引渡し日を合わせる必要があります。
媒介契約に向けて確認しておくべきことは?
他社への査定依頼の状況、媒介契約の種類への希望、販売時の制約の3つです。他社との差をどこで出すかは、この3つで決まります。
他社への査定依頼状況
前述の調査では、一括査定サイトで査定を申し込んだ人(n=50)の88.0%が、2社以上を比べていました。申し込まなかった人(n=150)では44.7%です。「ほかに何社に頼みましたか」と率直に聞いて大丈夫です。
(引用元:穴吹興産株式会社「不動産売却時の仲介会社選びに関する調査」)
媒介契約の種類(専属専任・専任・一般)への希望
専属専任媒介・専任媒介・一般媒介のどれを考えているかを聞きます。一般媒介を希望する売主には、理由を聞くと不安の中身が分かります。不安に答える提案ができれば、専任媒介・専属専任媒介につながります。
【要確認:宅地建物取引業法は改正される場合があります。国土交通省のサイトで最新情報をご確認ください】
近所に知られたくない・内覧可否などの販売条件
近所に知られたくない売主には、チラシやネット広告の出し方を変えます。居住中か空き家か、内覧に対応できる曜日も聞いておきます。
反響から媒介契約まで、どの段階で何を聞く?
反響直後の電話は最低限、訪問査定で詳しく、媒介契約の前に最終確認、の3段階に分けます。1回ですべて聞こうとすると、売主の負担が大きくなります。
反響直後の電話で聞く最低限の項目
反響直後は、物件の特定・売却時期・訪問査定の日程の3つだけに絞ります。初回の電話で細かく聞くと、売主は身構えます。ある不動産コンサルティング会社も、初回の電話はアポイントを取ることだけを目標にするようすすめています。一括査定の売主は、売却にまだ積極的でない人も多いからです。初回の電話では会う約束を取ることに集中し、詳しい話は訪問査定で聞きます。なお、同社がクライアント10店舗で集計した2019年の一括査定の受託率は11.04%(反響1,331件中、媒介受託・自社買取147件)でした。やや古いデータですが、一括査定の反響から媒介を獲得できるのは10件に1件ほどが目安です。
(引用元:ダイヤモンド不動産研究所「『不動産一括査定サイト』を不動産仲介会社が利用する際に気をつけること」)
訪問査定で聞く詳細項目
冒頭の12項目のうち、物件の状態・権利関係・売主の事情をここで聞きます。
媒介契約前に最終確認する項目
売出価格・売却期限・販売条件を最終確認します。⑪他社の査定状況と⑫近所への配慮・内覧可否も、ここで確認します。告知が必要な事項は、物件状況報告書に売主自身に書いてもらいます。
ヒアリング項目を漏らさないために何をすべき?
売却専用のヒアリングシート、面談直後の入力ルール、マネージャーのチェックの3つを組み合わせます。個人の記憶に頼らず仕組みで抜けを防げば、担当者ごとの査定の質のばらつきも小さくなります。
売却専用のヒアリングシートを用意する
冒頭の12項目をそのままシートにします。新人でも、上から順に聞けば必要な情報がそろいます。
面談後すぐに顧客管理システムへ入力する運用ルール
面談から戻ったら、その日のうちに入力するルールにします。入力されていれば、担当者が休んでも追客を引き継げます。
マネージャー同席とロープレでの品質チェック
月に数回、マネージャーが訪問査定に同席します。聞けていない項目をその場でメモし、帰りに伝えます。聞けなかった項目は、社内のロープレで質問の練習をします。
よくある質問
Q不動産の売却査定で、12項目すべてを1回の面談で聞くべきですか?
1回で聞く必要はありません。反響電話・訪問査定・媒介契約前の3回に分けると、売主の負担が小さくなります。初回の電話では、物件の特定・売却時期・訪問日程の3つに絞ります。
Q売主が売却理由を教えてくれない場合はどうすればよいですか?
無理に聞かず、「売却の時期」から聞きます。時期の理由を話すうちに、売却理由が出てくることが多いです。離婚などで話しにくい事情がある場合は、郵送物や連絡方法にも配慮します。
Q住宅ローン残債が査定額を上回りそうな場合、何を確認すべきですか?
まず返済予定表で正確な残債を確認し、足りない分を手元資金で払えるかを聞きます。払えない場合は、住み替えローンや任意売却が選択肢になります。早めに借入先の銀行へ相談するよう伝えます。
Q購入希望者や賃貸のヒアリング項目とは何が違いますか?
売却では、物件の状態・権利関係・ローン残債など「売るもの」の情報を集めます。購入や賃貸では、予算・希望エリア・入居時期など「探すもの」の条件を聞く点が大きく違います。
電話がつながらない売主にもヒアリングする方法
ALL GRITは、一括査定の反響を、反響直後から自社の公式LINEへつなぐ不動産会社向けのツールです。LINEでは、売却理由や売却時期といった項目を、タップだけで答えられるアンケートで聞けます。
電話で直接聞かれるより、売主が答えるハードルは下がります。そのため、電話がつながらない売主からも、ヒアリングに必要な情報を集めやすくなります。くわしくは資料でご確認ください。
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執筆者 河野 清博 ギバーテイクオール株式会社 代表取締役CEO 最終更新日:2026年10月23日 |

