値下げ提案のタイミングは、専任媒介の更新前にあたる売り出し3ヶ月目が基本です。ただし「反響の減少」「内見後の申込みゼロ」「競合の先行成約」「買い手の同じ指摘」の4つのサインのうち2つが重なれば、3ヶ月を待たずに相談します。首都圏の中古マンションでは、1ヶ月以内に成約した物件の値引き幅は売出価格比▲2.32%ですが、8ヶ月以上かかると▲10%を超えるからです。
値下げ提案が遅れると何が起きるのか?
提案が遅れるほど、成約時の値引き幅は広がります。さらに、売主の不満が担当者に向かい、媒介を他社に切り替えられる原因になります。
売れない期間が長いほど値引き幅は広がる
東京カンテイの調査では、首都圏の中古マンションは売り出しから成約までが長いほど値引き幅が大きくなっています。1ヶ月以内に成約した物件は売出価格から▲2.32%でした。一方、8ヶ月以上かかった物件はいずれも▲10%を超え、10ヶ月かかった物件では20%を超えて値下げしたケースが4分の1以上ありました。
(引用元:株式会社東京カンテイ「中古マンションの価格乖離率&売却期間(首都圏)」)
売主の不満は担当者と会社に向かう
不動産売却の経験者387人を対象にした調査では、34.1%が「なかなか売れなくて困った」と答えています。売れなかった原因として最も多かったのは「売り出し価格が適正ではない」(35.6%)でした。売れずに困った人の47.7%は自分から行動を起こしており、値下げのほか、不動産会社を変えたという声も出ています。
(引用元:株式会社NEXERとタクシエ(TAQSIE)による調査「不動産が売れない経験に関するアンケート」)
相場が動くと「適正価格」そのものが変わる
東日本レインズの集計では、2026年9月の首都圏の中古マンション成約件数は3,457件で、前年同月比▲22.7%でした。在庫は50,450件(同+15.1%)に増え、成約㎡単価は東京都区部(成約1,385件)で前年同月比▲0.9%、千葉県(成約447件)で+7.2%と地域で分かれました。売り出し時の査定額が、数ヶ月後も正しいとは限りません。
(引用元:公益財団法人東日本不動産流通機構「月例速報 Market Watch サマリーレポート 2026年9月度」)
値下げを提案すべき最初のサインは何か?
「反響が減った」「内見後の申込みがない」「近くの競合が先に売れた」「買い手から同じ指摘が続く」の4つがサインです。編集部の目安では、このうち2つが重なったら値下げを検討します。
反響数と内見数の推移を見る
反響が減っているなら、ポータルで比べられた時点で候補から外されています。内見は入るのに申込みがないなら、買い手は実物を見たうえで「この価格なら他を選ぶ」と判断しています。反響はあるのに内見につながらないなら、写真や掲載情報が原因のこともあります。その場合は値下げより先に、写真の撮り直しや掲載内容の見直しを提案します。
周辺の成約事例とのズレを見る
レインズで、同じマンションや近くの似た物件の成約事例を確認します。条件が近い物件が、より安く先に成約していれば要注意です。
買い手の質問や指値の内容を見る
内見後に「価格がもう少し下がれば」という声が複数出たら、サインです。指値が同じくらいの金額で続く場合、それが買い手の考える相場です。
値下げ提案は売り出しから何ヶ月目がよいのか?
3ヶ月目の媒介更新前が、価格見直しを決める基本のタイミングです。これは値引き幅のデータではなく、専任媒介の契約期間にもとづく区切りです。1ヶ月目は、値付けが合っているかを検証する期間と位置づけます。
| 成約までの期間 | 成約時の値引き幅(売出価格比) | その月までに成約した割合(累計) | 営業のやること |
|---|---|---|---|
| 1ヶ月以内 | ▲2.32% | 22.7% | 反響と内見の数で値付けを検証する |
| 3ヶ月 | ▲5.48% | 50.8% | 媒介更新の前に価格見直しを提案する |
| 6ヶ月 | ▲8.24% | 73.8% | 価格に加え、写真や広告の出し方も見直す |
| 8ヶ月 | ▲10.81% | 82.1% | 買取も含めて売り方そのものを相談する |
※首都圏の中古マンションで、2025年に売り出しから12ヶ月以内に成約した物件の集計です。値引き幅は、その月に成約した物件の数字です。「営業のやること」は編集部の整理です。
(引用元:株式会社東京カンテイ「中古マンションの価格乖離率&売却期間(首都圏)」)
1ヶ月目は値付けの検証期間
1ヶ月以内の成約では、値下げなしが49.6%で最も多くなっています。値付けが合っていれば下げずに売れるため、1ヶ月目は値付けの検証に使い、4つのサインのうち2つが重なれば見直しを相談します。
3ヶ月目が提案しやすい理由
専任媒介と専属専任媒介は、契約期間の上限が3ヶ月と決められています。反響と内見の数字が3ヶ月分たまり、根拠を示しやすくなります。
【要確認:宅地建物取引業法は改正される場合があります。e-Gov法令検索(宅地建物取引業法)で最新情報をご確認ください】
6ヶ月を超えてからの提案が苦しくなる理由
値引き幅は6ヶ月目の成約で▲8.24%、8ヶ月以上では▲10%を超えます。価格だけでは取り戻しにくいため、広告の出し直しや買取も含めて話します。
値下げ幅はどう決めればいいのか?
今の売出価格と、周辺の成約事例から条件の差を調整して出した価格との差額が、値下げ幅の目安です。金額は勘ではなく、事例から計算した数字で示します。
周辺の成約事例と比べて差額を出す
比べるのは売出価格ではなく、実際に売れた成約価格です。事例は編集部の目安で3〜5件使います。築年数・面積・階数・駅からの距離の差を調整し、自分の物件の価格を出します。今の売出価格との差が根拠になります。新しい売出価格は、指値が入る余地も見て決めます。
売主が納得する資料を用意する
宅建業者が価格について意見を言うときは、根拠を示す義務があります。資料には「これまでの反響・内見の数」「周辺の成約事例」「競合の売出状況」を入れます。
【要確認:宅地建物取引業法は改正される場合があります。e-Gov法令検索(宅地建物取引業法)で最新情報をご確認ください】
ポータルの検索価格帯をまたいで下げる
買い手はポータルで「4,000万円以下」のように上限を決めて探します。たとえば4,080万円を4,000万円以下にすると、それまで表示されなかった買い手に届きます。
売主に値下げをどう切り出せばいいのか?
最初に「下げましょう」とは言いません。売主の事情を聞き、活動の数字と周辺の動きを見せ、選択肢を並べて売主に選んでもらいます。
まず売主の事情を聞く
「いつまでに売りたいか」「住み替え先の予定」「ローン残債」を先に確認します。期限がある売主には、期限から逆算した話のほうが届きます。
数字→周辺事例→選択肢の順で話す
最初に、売り出しからの反響数・内見数を見せます。次に、同じ期間に近くで売れた物件の価格を示します。最後に「据え置き」「価格見直し」「売り方の変更」の3つを並べ、それぞれの見通しを説明します。
提案のタイミングを逃さないために、組織で何を決めておくべきか?
物件ごとの反響数・内見数・経過日数を週1回記録し、値下げ提案の基準を社内で文字にします。担当者の勘に任せると、提案が遅れる物件が出ます。
物件ごとに追う項目を決める
管理シートには、最低限次の項目を入れます。
- 売り出し日と経過日数
- 週ごとの反響数(ポータル別)
- 内見数と、内見後の買い手の声
- 周辺で新たに出た売出物件と成約事例
媒介報告の日を判断の日にする
専任媒介は2週間に1回以上、専属専任媒介は1週間に1回以上、売主への活動報告が必要です。この報告日を、値下げ提案を検討する日として社内で決めておきます。
【要確認:宅地建物取引業法は改正される場合があります。e-Gov法令検索(宅地建物取引業法)で最新情報をご確認ください】
よくある質問
Q不動産売却で売主に値下げを断られ「もっと待ちたい」と言われたら、営業担当はどう返すべきですか?
待つこと自体は否定せず、「いつまで待つか」と「その間に何を変えるか」を一緒に決めます。たとえば「次の報告日までに反響が増えなければ、価格を見直す」と期限と条件を決めておきます。期限を決めずに待つと、そのまま半年が過ぎて値引き幅が広がります。
Q相場が下がっている時期は、値下げ提案のタイミングを早めるべきですか?
早めます。周辺の成約単価が下がっているときは、3ヶ月を待たずに周辺事例を見せて相談します。相場が下がる中で据え置くと、待つほど周辺の物件との価格差が開くからです。
Q値下げ提案を一度断られたら、再提案までどのくらい空けるべきですか?
次の媒介報告日が目安です。新しい反響数や、前回のあとに出た周辺の成約事例など、前回と違う材料を持っていきます。
Q中古マンションの値下げ幅は売出価格の何%が目安ですか?
一律の%はなく、提案額は周辺の成約事例との差額から出します。参考値として、首都圏では3ヶ月以内に成約した物件の平均が売出価格比▲3.57%、6ヶ月目の成約では▲8.24%でした。
媒介獲得の入口を強くするならALL GRIT
値下げ提案の前段となる媒介獲得では、一括査定の反響直後にどれだけ早く売主とつながれるかで差がつきます。反響直後は電話がつながらず、ほかの連絡手段もないまま他社に先を越されることがあります。
ALL GRITは不動産会社向けのMAツールです。一括査定サイトからの反響をLINEのお友達に変え、反響直後からLINEで自動追客できます。机上査定の段階から売主との接点を保ち、媒介獲得につなげます。
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執筆者 河野 清博 ギバーテイクオール株式会社 代表取締役CEO 最終更新日:2026年11月4日 |

