売却提案書は、①現地調査 ②相場データ集め ③売主への聞き取り ④7項目の作成 ⑤提出後の追客、の5手順で作ります。
入れる7項目は、物件の基本情報・物件の状態・周辺の相場・査定価格と根拠・販売戦略・媒介契約の種類・費用と次の手順です。
書く順番は「査定価格 → 根拠 → 売り方 → 次の手順」です。

不動産売却提案書とは何か?査定書とどう違うのか?

売却提案書は、査定価格に「どう売るか」を加えた、媒介獲得のための営業資料です。
査定書は「いくらで売れそうか」を示すだけです。
提案書は「誰に、どう売り、いつ売れそうか」まで示します。

売主は提案書で何を見ているのか?

売主は価格だけで会社を決めていません。
NEXER Groupと房総スタイルの調査では、売却を検討・経験した100人のうち31人(31.0%)が「担当者の人柄・誠実さ」を決め手に挙げ、1位でした。
3位の「査定額の高さ」は100人中16人(16.0%)です。

複数社を比べて差を感じた点(複数回答)は「査定額の違い」が100人中48人(48.0%)でした。
「担当者の誠実さ・人柄」も100人中45人(45.0%)とほぼ並びます。
提案書は、数字と一緒に担当者の考え方を伝える道具です。

(引用元:株式会社NEXER Groupと千葉の不動産買取『房総スタイル』による調査「不動産査定・売却業者の選び方に関する意識と満足度調査」/房総スタイル)

比べられる前提で作る

Faciloの調査では、売却経験者1,002人のうち71%が複数社に査定を依頼していました。
一方で、媒介契約は1社に絞る人が1,002人中65%です。
つまり提案書は他社と並べて読まれ、多くは1社だけが選ばれます。

(引用元:株式会社Facilo「不動産売却の課題と顧客体験に関する調査」)

売却提案書に入れるべき7つの項目は?

入れるべき項目は、物件の基本情報・物件の状態・周辺の相場・査定価格と根拠・販売戦略・媒介契約の種類・費用と次の手順の7つです。
どれか1つでも欠けると、売主は判断できず「他社にも聞いてみます」となります。

項目 書く内容 書き方のポイント
物件の基本情報 所在地・面積・築年数・間取り・権利関係 登記簿と現地の内容が合っているか確かめる
物件の状態 設備・外壁・屋根・室内の状態 傷みは写真で示し、売りやすい点も書く
周辺の相場 近い条件の成約事例・売出し中の物件 成約事例と売出し事例を分けて書く
査定価格と根拠 査定価格・計算の流れ 「なぜこの金額か」を短く言い切る
販売戦略 広告の出し方・想定する買主層・売却期間の見込み 自社でできることを具体的に書く
媒介契約の種類 一般・専任・専属専任の違い 売主の希望と合う理由を添える
費用と次の手順 仲介手数料などの概算・契約までの流れ 返事の期限と必要書類を書く

査定価格は根拠とセットで書く

宅建業法では、売買すべき価額について意見を述べるとき、根拠を示す義務があります。
国土交通省の考え方では、根拠は価格査定マニュアルや同種の取引事例などとされています。

【要確認:宅地建物取引業法は改正される場合があります。e-Gov法令検索と国土交通省のサイトで最新情報をご確認ください。】

売主側も根拠を求めています。
NEXER Groupと房総スタイルの同じ調査では、100人中20人(20.0%)が「査定額の根拠をもっと詳しく説明してほしかった」と答えました(複数回答)。

販売戦略と媒介の種類は売主の希望に合わせる

早く売りたい売主には広く広告を出す売り方を、近所に知られたくない売主には広告を控えた売り方を提案します。
そのうえで、売り方に合う媒介の種類を示します。

媒介の種類ごとに、レインズへの登録期限や業務報告の回数が法律で決まっています。
専任媒介は2週間に1回以上、専属専任媒介は1週間に1回以上の報告が必要です。

【要確認:最新の条文はe-Gov法令検索(宅地建物取引業法 第34条の2)でご確認ください。】

売却提案書はどんな手順で作るのか?

売却提案書は、次の5手順で作ります。

  1. 現地調査で物件の状態を確かめる
  2. 相場データを集める
  3. 売主の事情を聞き取る
  4. 7項目をページ順に並べて書く
  5. 提出後の追客で次の連絡日を決める

①現地調査で物件の状態を確かめる

室内の傷み、水回りの設備、外壁と屋根の状態を見ます。
あわせて境界の目印、前面道路の幅、日当たり、周りの環境も確かめます。

②相場データを集める

成約事例はレインズで、近い条件の物件を選んで集めます。
国土交通省の「不動産情報ライブラリ」でも取引価格や地価を調べられます。
土地は国税庁の路線価や、国土交通省の公示地価も確認します。

売主が不足を感じているのも、この地域の相場情報です。
穴吹興産の調査では、中四国・九州・関西で売却を経験した200人のうち71.0%が、何らかの情報不足を感じていました。
不足していた情報には、地域に絞った相場データや具体的な事例が挙がっています。

(引用元:穴吹興産株式会社「不動産売却時の仲介会社選びに関する調査」)

③売主の事情を聞き取る

売る理由、売りたい時期、希望価格は必ず聞きます。
住み替え先の有無、住宅ローンの残り、近所に知られたくないかも確認します。
この答えが、販売戦略と媒介の種類を決める材料になります。

④7項目をページ順に並べて書く

書く順番は「査定価格 → 根拠 → 売り方 → 次の手順」です。
金額を最初に出し、その後で理由を積み上げます。
物件情報と相場は根拠の一部なので、価格のすぐ後に置きます。
ページ構成の例は次のとおりです。

ページ 載せる内容 ねらい
1 査定価格と、売主の希望価格への考え 希望より低いときは理由を一言そえる
2 物件の基本情報と状態 現地を見たことを伝える
3 周辺の相場(成約事例の比較表・売出し中の物件) 所在地・面積・築年数・成約価格を並べる
4 査定価格の計算の流れ 事例との違いを「駅に近い」などの言葉で書く
5 販売戦略 広告・買主層・売却期間の見込みを書く
6 媒介契約の種類と費用 売主の希望に合う理由を添える
7 次の手順・返事の期限・必要書類 「〇月〇日までにお返事ください」と書く

ページ数は一例で、物件に合わせて増減します。
販売戦略の文例は【別記事A:売却提案書の例文とテンプレート(リンク)】、査定根拠の書き方は【別記事B:査定価格の根拠の書き方(リンク)】で紹介しています。

⑤提出後の追客で次の連絡日を決める

売主は長く迷います。
Faciloの調査では、売却経験者1,002人中87%が、売却を思い立ってから媒介契約まで1か月以上かけていました。
媒介前の連絡は、週1回を望む声が最も多い結果です。

(引用元:株式会社Facilo「不動産売却の課題と顧客体験に関する調査」)

提案書は渡して終わりにせず、提出したその場で次の連絡日を決めておきます。
連絡するときは、新しい成約事例など売主の判断に役立つ情報を添えます。

提案書づくりの手間を減らすにはどうすればよいか?

枠組みを社内で統一し、査定の計算は既存の仕組みに任せます。
そうすれば、毎回書き直す部分に時間を使えます。

毎回書く部分と使い回す部分を分ける

会社紹介や、媒介の種類・費用の一般的な説明は使い回せます。
物件情報、相場、査定価格、販売戦略は毎回書き直します。
テンプレートの中で、この2つを色分けしておくと書き漏れが減ります。

価格査定マニュアルの出力を使う

不動産流通推進センターの価格査定マニュアル(Web上で使う有料のツール)は、査定結果を「売却価格提案書」の形で出せます。
出力はExcelファイルなので、自社の内容を書き足して使えます。

(引用元:公益財団法人不動産流通推進センター「既存住宅価格査定マニュアル」)

売却提案書でよくある失敗は?

多い失敗は、物件情報の不足、根拠のあいまいさ、売主の事情の入れ忘れの3つです。
どれも、売主に「この会社はうちの物件を見ていない」と思われる原因になります。

物件情報が足りないまま作る

机上査定の段階の情報だけで作ると、設備や傷みが反映されません。
訪問後に査定価格が大きく変わると、売主の信頼を失います。
現地調査を終えてから最終版を作ってください。

根拠があいまいなまま高い価格を出す

根拠のない高い査定価格は、媒介を取れても売れ残りにつながります。
価格と根拠は必ずセットで出してください。

売主の事情が入っていない

どの売主にも同じ販売戦略を出すと、比べたときに差が出ません。
聞き取った売る理由や時期を、販売戦略の中に書き込みます。

よくある質問

Q不動産の売却提案書のテンプレートは、物件ごとに使い回してもよいですか?

枠組みは使い回せますが、物件ごとの内容は毎回作り直してください。
文例とひな形は【別記事A:売却提案書の例文とテンプレート(リンク)】で紹介しています。

Q売却提案書は紙とPDFのどちらで売主に渡すべきですか?

両方用意します。
訪問時は紙を見せながら説明し、後からPDFを送ります。

Q新人営業に売却提案書を任せるとき、何に気をつけるべきですか?

テンプレートを渡すだけでは足りません。
相場データの読み方と根拠の書き方を教えてください。
最初の数件は、上司が確認してから売主に出す流れにします。

提案書を出す前に他社に決まらないための反響対応

どれだけ良い提案書を作っても、訪問査定の約束が取れなければ見てもらえません。
一括査定では、同じ売主に複数社から同時に連絡が入ります。
反響直後に連絡がつかないと、提案書を出す前に他社に決まってしまいます。

ALL GRITは、一括査定の反響をLINEのお友達に切り替える不動産会社向けのMAツールです。
反響直後からLINEで自動追客できるため、通電しない売主ともつながりを保てます。
提案書を見てもらう機会を増やしたい方は、ぜひ資料をご覧ください。

資料ダウンロードはこちら

河野清博

執筆者

河野 清博

ギバーテイクオール株式会社 代表取締役CEO

最終更新日:2026年11月5日