不動産会社(売買仲介)の業務効率化は、「削れる仕事」と「削れない仕事」を分けることから始まります。反響への初回連絡、査定書や販売図面の作成、売主への業務報告書づくりは、仕組みで減らせます。訪問査定のヒアリング、価格の提案、契約内容の説明は、人が時間をかけるべき仕事です。
なお本記事は、売買仲介に絞って解説します。賃貸仲介や賃貸管理の業務は扱いません。
不動産会社(売買仲介)に業務効率化が必要なのはなぜ?
媒介獲得は、反響直後の対応で大きく左右されるからです。さらに媒介を取った後は定型業務が増え、次の査定に動く時間が減ります。効率化は「媒介を取る力」と「媒介を回す力」の両方に効きます。
売却反響は複数社に同時に届く
一括査定の反響は、同じ売主から複数の会社に届きます。一括査定サイト運営会社の2020年の調査によると、売却者100人中85人(85.0%)が2社以上に査定を依頼しました。最多は3社で、100人中27人(27.0%)です。
(引用元:株式会社Speee「【調査リリース】不動産を売却した人は『平均3社以上』に査定依頼をしていた」)
売主から見ると、最初に話した会社の説明は、ほかの会社と比べるときの目安になりやすいです。初回連絡が遅れるほど、比べる前に候補から外れやすくなります。
媒介を取った後に定型業務が増える
専任媒介を取ると、レインズ登録、販売図面、ポータル掲載、売主への業務報告が始まります。どれも媒介を続けるうえで欠かせない仕事ですが、手順はほぼ毎回同じです。
媒介が増えるほど、こうした作業も同じだけ増えます。ここに時間を取られると、新しい反響に手が回りません。媒介を取るほど忙しくなり、次の媒介を取れなくなる悪循環が起きます。
人を増やすだけでは解決しない
忙しさを人の数で解決しようとすると、採用と教育に時間とお金がかかります。新人が追客や査定を1人でこなせるようになるまでにも、時間が必要です。今いる人数で回る仕組みを作るほうが、早く確実に効果が出ます。
売買仲介の業務フローで時間が消えているのはどこ?
大きな無駄は3つです。初回連絡を人の手だけで回していること、同じ情報を何度も入力する手間、業務のやり方が人によって違うことです。どれも仕組みで減らせます。
初回連絡を人の手だけで回している
初回連絡をすべて人が行うと、反響のたびに今の仕事が止まります。速さを保とうとすると、営業マンは反響待ちで店に残ることになります。
不動産ポータルサイトの事例報告では、2名で売買仲介を行う店舗が、営業時間内(9時〜18時)の反響への接触率を38.2%から63%に上げました。施策は2つです。2名のどちらかが休みの日は、もう1人が外出を控えること。そして、2分以内に初回対応できたかを店長が確認する仕組みです。
(引用元:株式会社LIFULL「一括査定初回対応体制を変えて、接触率165%アップ!現役不動産会社の取り組みをご紹介」)
人の体制だけで速さを上げようとすると、外出、つまり査定や売主対応の時間が削られます。ツールで初回接触を支えることが、速さと外回りを両立させる近道です。
同じ情報を何度も入力する手間
査定サイトの管理画面、自社の顧客管理、レインズ、ポータルサイトに同じ情報を入れていませんか。入力のたびに時間がかかり、転記ミスも起きます。
一括査定サイトを複数使っていると、反響を確かめるだけでも管理画面をいくつも開くことになります。
業務のやり方が人によって違う
査定書の書き方や追客の回数が、営業マンごとに違う会社は少なくありません。やり方がばらばらだと、担当者が休んだときにほかの人が引き継げません。新人に教えるときも、教える人によって内容が変わります。手順をそろえるだけでも、引き継ぎや教育の時間は短くなります。
売買仲介で削れる仕事10選とは?
削れる仕事の共通点は「毎回ほぼ同じ手順」で「売主との信頼づくりに直結しない」ことです。表で全体を確認したうえで、各項目の削り方とコツを見ていきます。

| # | 削れる仕事 | 削り方 |
|---|---|---|
| 1 | 反響への初回連絡 | 自動送信 |
| 2 | 反響情報の転記 | 顧客管理への自動取り込み |
| 3 | 長期追客 | 定期配信の自動化 |
| 4 | 机上査定書の作成 | ひな形・査定ツール |
| 5 | 物件調査 | オンライン取得・チェックリスト |
| 6 | 販売図面の作成 | ひな形・外注 |
| 7 | レインズ・ポータル登録 | 一括入稿・連携 |
| 8 | 業務報告書の作成 | ひな形・自動集計 |
| 9 | 内覧の日程調整 | オンライン予約 |
| 10 | 契約・決済の準備 | 電子契約・ひな形 |
不動産会社の業務効率化ツールはどの仕事に効く?
ツールは種類ごとに、効く仕事が決まっています。自社で困っている仕事から逆算して選びます。
| ツールの種類 | 主に効く仕事 |
|---|---|
| 顧客管理(CRM) | ② |
| 自動追客(MAツール) | ①③ |
| 査定ツール | ④ |
| 物件入稿・連携ツール | ⑦ |
| 電子契約サービス | ⑩ |
| 生成AI | ⑥⑧の文案づくり(個人情報は入力しない) |
反響対応・追客で削れる仕事(①〜③)
①一括査定反響への初回連絡を自動化する
反響のたびに電話をかけ、つながらなければかけ直す。この作業を人だけで回すと、ほかの仕事が止まります。
反響が入ったら、まずメールやSMSでお礼と次の連絡予定を自動で送ります。文面はお礼だけで終わらせず、「本日〇時ごろにお電話します」と次の連絡を予告します。予告しておけば、売主も電話を待つ準備ができます。
どの手段にも弱点があります。電話は通電しないことも多く、メールは他社の連絡に埋もれがちです。
その他のコミュニケーション手段としてはLINEがありますが、お友達登録が済んでいないとメッセージは送れません。一括査定の反響直後にLINEを使えないのは、業界に共通する課題です。反響をLINEのお友達登録につなげるALL GRITのような仕組みを使えば、この壁を越えられます。
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②反響情報の転記をなくす
査定サイトから届いた反響を、手で顧客管理に打ち直していませんか。自動取り込みにすればこの作業はなくなり、入力ミスと対応漏れも減ります。
あわせて、どの査定サイトから来た反響かを記録しておきます。サイトごとの面談化率や媒介獲得率が分かれば、広告費の使い方も見直せます。
③「すぐには売らない」売主の長期追客を自動化する
すぐには売らない売主への連絡は、目の前の案件に追われて後回しになりがちです。しかし「相場を知りたいだけ」という売主も、数か月後に売却を決めることがあります。
定期的な情報発信を自動にし、返信が来た売主から人が電話をかけます。配信する内容は、地域の成約事例や相場の動き、売却の流れの解説などが向いています。
売り込みばかりだと、配信を止められてしまいます。売主が「そろそろ相談しよう」と思ったときに、思い出してもらえる関係を保つことが目的です。
メールでの配信は、読まれないまま終わることも少なくありません。①でLINEのお友達になった売主なら、LINEで配信を続けられます。ALL GRITは、この長期追客もLINEで自動化できます。
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査定・販売活動で削れる仕事(④〜⑦)
④机上査定書の作成時間を短くする
机上査定書を1件ずつ一から作ると、成約事例を探すだけでも時間がかかります。ひな形と査定ツールを使えば、作成時間を短くできます。成約事例の集め方を決めておけば、品質もそろいます。
机上査定は、訪問査定の約束を取るための入口です。作り込みに時間をかけるより、早く届けることを優先します。
⑤物件調査の段取りを型にする
物件調査は、法務局や役所に足を運ぶため時間がかかる仕事です。登記情報は、登記情報提供サービスでオンライン確認できます。
【要確認:登記情報提供サービスの利用条件や料金は変わる場合があります。登記情報提供サービスのサイトで最新情報をご確認ください】
役所調査では、都市計画、道路、上下水道など、物件ごとに確認先が変わります。よく使う窓口と確認項目をチェックリストにしておけば、毎回調べ直す手間と抜け漏れを防げます。
⑥販売図面・物件資料を型にする
販売図面を物件ごとに一から作ると、担当者によって仕上がりもばらばらになります。間取り、設備、周辺環境など載せる項目をひな形で決めておけば、早く作れて担当者ごとの差も出ません。
写真撮影や図面作成を外注する方法もあります。社内で作るか外注するかは、1件あたりの作成時間を見て決めます。
⑦レインズとポータルサイトの二重入力を減らす
レインズと各ポータルサイトに同じ物件情報を別々に入力すると、時間も転記ミスも増えます。一括入稿や連携を使えば、入力は1回で済みます。
専任媒介は契約日から7日以内、専属専任媒介は5日以内のレインズ登録が必要です(休業日を除く)。期限がある作業だからこそ、仕組みで早く終わらせる価値があります。
【要確認:宅地建物取引業法施行規則は改正される場合があります。e-Gov法令検索で最新情報をご確認ください】
報告・内覧・契約で削れる仕事(⑧〜⑩)
⑧売主への業務報告書を定型化する
専任媒介は2週間に1回以上、専属専任媒介は1週間に1回以上、売主への販売状況の報告が必要です。媒介の数が増えるほど、報告書づくりの時間もふくらみます。
【要確認:宅地建物取引業法は改正される場合があります。e-Gov法令検索で最新情報をご確認ください】
報告書のひな形を決め、反響数や内覧数を自動で集計すれば作成時間を短くできます。とはいえ、数字を並べるだけでは売主に伝わりません。「反響が少ないので、価格の見直しを考えましょう」といった次の提案を一言添えます。集計は仕組みに任せ、提案の中身に時間を使います。
⑨内覧の日程調整をオンライン予約にする
内覧の希望が入るたびに、売主と購入希望者の間で日程を調整する必要があります。居住中の物件ほど、電話やメールが何往復も発生します。空き枠から予約してもらえば、連絡を減らせます。
売主が立ち会える時間を先に出してもらい、その枠の中で予約を受けます。
⑩契約・決済の書類準備と日程調整を効率化する
契約から決済までは、書類の準備と、司法書士・金融機関・売主との日程調整が続きます。どちらも手順が決まっているため、型にしやすい仕事です。
2022年5月から、重要事項説明書や契約書を電子で渡せるようになりました。ただし、相手方の承諾が必要です。
【要確認:宅地建物取引業法は改正される場合があります。国土交通省の実施マニュアルで最新情報をご確認ください】
不動産会社向けシステム会社の調査によると、回答した不動産会社214社のうち58.9%(約126社)が電子契約の利用経験ありと答えました。業態別では、売買仲介業を行う72社での利用経験は29.2%にとどまります。
(引用元:株式会社いえらぶGROUP「電子契約を利用したことがある不動産会社は58.9%!エンドユーザーの利用率も増加傾向に」)
電子契約を使わない場合も、必要書類の一覧や案内文をひな形にしておくだけで効果があります。
効率化してはいけない「削れない仕事」は何?
訪問査定のヒアリング、価格の提案と交渉、契約内容の説明と売主対応の3つです。10選で生まれた時間は、この3つに回します。
訪問査定と売却理由のヒアリング
売却理由や住み替えの時期は、対面だからこそ聞けます。ここで聞けた内容が、媒介獲得と価格設定の土台になります。
ヒアリングの内容によって、売却の進め方は大きく変わります。早く現金にしたい売主と、時間をかけても高く売りたい売主では、提案がまったく違うからです。
不動産の売却経験者400人を対象にした調査によると、査定を相談する会社を決めたきっかけの1位は「担当者の対応」でした。会社選びでは、担当者とのやりとりが重く見られています。
(引用元:日本トレンドリサーチとタクシエ(TAQSIE)による調査「仲介業者の決め方に関するアンケート」/タクシエ(TAQSIE))
売出価格の提案と価格交渉
成約事例や相場データの準備は効率化できます。しかし、売主の希望価格と相場に差があるとき、納得してもらう説明は人にしかできません。購入希望者との価格交渉も、売主の気持ちをくみながら進める仕事です。
相場より高い価格で売り出すと、売れ残って値下げすることになりがちです。根拠を示して話し合い、売主と一緒に価格を決める力が求められます。
契約内容の説明と引渡しまでの売主対応
売買契約の前には、契約条件や手付金、引渡しまでの流れと費用を売主に説明します。売主にとっては、不安を減らす大事な時間です。説明が足りないと、引渡し前後のトラブルにつながります。
書類の準備は効率化しても、説明は手を抜けません。丁寧な説明と対応が、紹介や次の取引につながります。
自社が買主側も担当する場合は、買主への説明も行います。物件の弱点も含めて伝える場面なので、同じく人が時間をかけるべき仕事です。
不動産会社の業務効率化で失敗しないための注意点は?
ツール選びより先に、「誰が・いつ・何をするか」という運用ルールを決めることです。社内に広げるときは、1業務ずつ段階的に進めます。
ツールを入れるだけでは効果が出ない
自動で初回連絡を送っても、折り返しのルールがなければ反響は止まります。返信が来たら誰が何分以内に電話するのか、つながらなければ何回かけ直すのかを決めます。先にルールを決めてからツールを選びます。
営業マンの不安には段階導入で応える
「今のやり方を変えられる」という不安は、どの会社でも出ます。まず反響への初回連絡など1業務だけ変え、結果を数字で共有します。効果が見えれば、ほかの営業マンも「使ってみよう」と思えます。
自動化しすぎて冷たい印象にならないようにする
自動の連絡ばかりが続くと、売主は「この会社は機械的だ」と感じます。自動化するのは、お礼や日程の案内など形の決まった連絡だけにします。売主の事情に関わるやりとりは、人が自分の言葉で行います。
今日から何を始めればいい?
営業マン1人の1週間の業務を、時間で記録することから始めます。削れる仕事にかけている時間が分かれば、手をつける順番が決まります。
営業マン1人の1週間を時間で記録する
30分単位で「反響対応」「査定」「売主対応」「書類・入力」「移動」に分けて記録します。1人分の記録があれば、無駄の大きい業務は見えてきます。
時間が長く、手順が決まっている業務から手をつける
記録を見たら、時間が長い業務と、手順が毎回同じ業務に印をつけます。両方に当てはまる業務が、最初に効率化すべき業務です。反響への初回連絡や入力作業は、その代表例です。
効果を測る数字を先に決める
反響から初回連絡までの時間、通電率、訪問査定の件数、媒介獲得数を決めておきます。導入前の数字を残せば、効果を比べられます。数字は月に1回見直し、効果が出ていなければルールを変えます。
よくある質問
Q不動産会社の業務効率化は、何から始めればいいですか?
営業マン1人の1週間の業務を時間で記録し、時間が長くて手順が毎回同じ業務から始めます。売買仲介では、一括査定の反響への初回連絡と、反響情報の転記がその代表です。
Q営業5名ほどの小さな不動産会社でも、業務効率化の効果はありますか?
あります。少人数ほど1人の担当範囲が広いため、定型業務を1つ外すだけでも査定に使える時間が増えます。最初から大きなシステムを入れる必要はありません。反響への初回連絡など、1つの業務から始めるのがおすすめです。
Q一括査定の反響が多すぎて全件に対応できない場合、不動産会社はどうすればいいですか?
初回連絡は自動にして、返信があった売主や売却時期が近い売主から電話します。すべての反響に同じ力をかけると、本当に売りたい売主への対応が遅れます。返信がない売主には、長期追客で連絡を続けます。
Q業務効率化のために、不動産会社は今の顧客管理システムを切り替える必要がありますか?
全部を切り替える必要はありません。二重入力が起きている部分から、連携や追加を考えます。今のシステムで困っていることを書き出し、足りない部分を補う形で選びます。
売却反響の初回対応を仕組みにしたい方へ
売買仲介の業務効率化で、最初に手をつけやすいのは反響直後の初回対応と追客です。
ALL GRITは、不動産会社向けの自動追客ツール(MAツール)です。一括査定サイトからの反響をLINEのお友達につなげ、反響直後からLINEで自動追客を行います。
営業マンが動く前に初回接触が済むため、訪問査定や売主対応に時間を使えます。
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執筆者 河野 清博 ギバーテイクオール株式会社 代表取締役CEO 最終更新日:2026年10月28日 |

