不動産会社の過去客リストは、「一つにまとめる」「希望時期と反応で優先順位をつける」「途切れない手段で接点を保つ」の3ステップで、訪問査定や媒介獲得(受託)につなげられます。
追加の広告費はかかりません。売却を決めるまでに半年以上かかった売主も約3割いるため、反響直後に媒介が取れなかった人にも、まだ受託の機会があります。
※ここでいう「過去客」は、過去に査定依頼・問い合わせ・来店があり、媒介や成約に至らなかったお客様を指します。
不動産会社の過去客リストは、なぜ活用すべき営業資産なのか?
過去客は、一度は自社に連絡をくれた人です。追加の広告費をかけずに連絡でき、「まだ時期が来ていないだけ」の人も多く含まれます。反響を買い足す前に、まず手元のリストを見直すべき理由はここにあります。
新規反響を集めるより、追加の費用がかからない
一括査定サイトやポータルの反響は、1件ごとに費用がかかります。一方、過去客リストはすでに手元にあるため、連絡に追加の広告費はかかりません。
また、過去客は机上査定の結果を受け取ったり、来店したりした人です。ゼロから関係をつくる新規反響より、話を始めやすい相手です。
売却の決断までに、半年以上かかった人が約3割いる
不動産売却に関する民間調査では、回答者342人のうち不動産の売却経験者(26.9%)に、売却を決めるまでの期間を聞いています。その結果、半年以上かかった人は32.6%で、1年以上かかった人も18.5%いました(いずれも売却経験者に占める割合)。
(引用元:株式会社NEXERと不動産売却・無料査定の株式会社EverGreenによる調査「不動産売却のきっかけと動機に関するアンケート」)
つまり、査定から半年たって連絡が途絶えた人の中にも、これから動く人がいます。反響直後に媒介が取れなかった人を放置すると、その受託の機会を手放すことになります。
不動産会社の3割が「顧客管理・追客の見直し」に注力したいと回答
不動産会社182件を対象にした調査では、30.2%が「顧客管理・追客の見直し」に注力したいと答えました。
(引用元:株式会社いえらぶGROUP「2025年の不動産市況への意識に関するアンケート調査」)
新規反響を増やすより、手元の顧客を追い直すことに目を向ける会社が増えています。
過去客リストを活用できていない会社には、どんな共通点がある?
活用できていない会社では、リストが担当者や媒体ごとに散らばり、連絡も個人任せになっています。問題はリストの量ではなく、管理と連絡のしかたにあります。
リストが担当者ごと・媒体ごとに散らばっている
一括査定はメール、ポータルは管理画面、来店客は紙の受付表。この状態では過去客の全体数が分からず、同じお客様からの2回目の反響を別人として扱ってしまいます。
連絡が担当者任せで、履歴が残っていない
忙しい時期は追客が止まり、異動や退職があると、そのお客様は誰も追わなくなります。履歴がないと後任は同じ質問を繰り返し、お客様の信頼を失います。一元管理の考え方は「不動産会社の顧客管理方法」で解説しています。
過去客リストを売上につなげるには、どんな手順で進めればいい?
手順は3つです。リストを一つにまとめ、希望時期と反応で優先順位をつけ、途切れない連絡手段で接点を保ちます。
ステップ1:リストを棚卸しして一つにまとめる
散らばっている過去客の情報を一つの表に集めます。直近1〜3年分から始めると、作業が止まりにくくなります。最低限そろえたい項目は、次のとおりです。
| 項目 | 記入例 | 使い道 |
|---|---|---|
| 反響日・反響元 | 2025年4月・一括査定 | 経過期間の把握 |
| 物件の住所・種別 | ○○町・戸建 | 相場情報の出し分け |
| 売却の希望時期 | 1年以内・未定 | 優先順位づけ |
| 最終接触日 | 2025年6月 | 連絡漏れの発見 |
| 連絡手段 | 電話・メール・LINE | 手段の使い分け |
| 前回の反応 | 机上査定のみ希望 | 次の提案内容の判断 |
ステップ2:希望時期と反応で優先順位をつける
売却の希望時期と、直近の反応(返信・通電・メールの開封など)の2つで4段階に分け、連絡の濃さを変えます。
| ランク | 希望時期 | 直近の反応 | 主な連絡手段 | 頻度の目安 |
|---|---|---|---|---|
| A | 半年以内 | あり | 電話+LINE | 2週に1回 |
| B | 半年以内 | なし | SMS・LINEで状況確認、反応があれば電話 | 月2回 |
| C | 1年以内・未定 | あり | LINE・メールで相場情報 | 月1回 |
| D | 1年以内・未定 | なし | 相場情報の定期配信のみ | 月1回以下 |
頻度は目安です。反応の有無や希望時期は変わるため、毎月この表に当てはめ直してランクを見直します。ランクの決め方は「不動産売却の見込み客ランク分け」が参考になります。
ステップ3:連絡手段を使い分け、接点を途切れさせない
過去客への連絡手段は、電話・SMS・メール・LINEの4つが中心です。電話は通電すれば話が早い反面、つながらない人が多くいます。SMSは電話番号だけで届き、メールは長い資料を送るのに向いています。
LINEは、幅広い年代に読まれやすい手段です。総務省の調査(13〜79歳、全体1,800人)では、60代のLINE利用率は91.1%でした。
(引用元:総務省「令和6年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」)
ただし、LINEはお友だち登録が完了していないとメッセージを送れません。一括査定の反響直後にLINEでつながれず、電話とメールだけで追客している会社が多いのはこのためです。反響の段階でお友だちになっておけば、過去客になっても連絡を続けられます。ALL GRITのように、反響直後からLINEで接点をつくれるツールを使う会社も増えています。
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再接触の最初の一言は、売り込みではなく「お知らせ」にします。例文は次のとおりです。
電話の切り出し
「以前、○○町のご自宅の査定でご連絡いただいた△△不動産の□□です。近くで最近成約が出たので、ご参考までにお知らせしたくお電話しました。1分ほどよろしいですか?」
LINE
「○○様、以前査定のご依頼をいただいた△△不動産です。○○町周辺で、この半年に戸建の成約が〇件ありました。価格帯をまとめた資料をお送りしてもよろしいですか?」
SMS
「△△不動産の□□です。以前ご依頼いただいた査定から時間がたちましたので、今の相場で査定額を無料で更新できます。ご希望の方はご返信ください。配信停止は『停止』とご返信ください。」
LINEの細かな配信設計は「不動産売却のLINEステップ配信」で解説しています。
過去客にはどんな情報を送ると反応されやすい?
反応されやすいのは、お客様自身の物件や判断に関わる情報です。周辺の成約事例や相場の変化、金利の動きなどがこれにあたります。物件の売り込みだけを送り続けると、ブロックや配信停止につながります。
周辺の成約事例や相場の変化
売主がまず知りたいのは「自分の家がいくらで売れるか」です。売却を検討中の200人に聞いた調査では、38%が、最初の行動に「ネットで相場を調べる」を挙げました。
(引用元:マイナビニュース不動産査定ガイド「不動産売却及び不動産一括査定サービスに関する意識調査」)
過去客には、物件のある地域の成約事例をまとめて送ります。「近所でこの価格で売れた」という情報は、自分ごととして読まれます。
金利の動きなど、売り時の判断に関わるニュース
一般の消費者883件に聞いた調査では、80.6%が、金利の上昇は購入意欲に影響すると答えました。
(引用元:株式会社いえらぶGROUP「2025年の不動産市況への意識に関するアンケート調査」)
買主の購入意欲が金利に左右されるなら、売主にとって金利の動きは売り時を判断する材料になります。金利が動いたときは、住み替えを考えている過去客に連絡するよい機会です。「売るなら今か、待つべきか」を一緒に考える姿勢で連絡すると、相談につながります。
売り込みと受け取られない送り方
先ほどの売却検討者200人への調査では、40%が「信頼できる不動産会社に出会えるか」を最大の不安に挙げました。
売主が気にしているのは、価格だけでなく「この会社を信頼してよいか」です。毎回「売りませんか」と聞く連絡は逆効果になります。売り込みは3回に1回までにし、残りは相場情報など役立つ情報だけを送ります。
メールやSMSで案内する前に確認したいこと
- 個人情報保護法:査定依頼などで取得した連絡先は、取得時に示した利用目的の範囲で使います。範囲を超える案内を送る場合は、本人の同意が必要になることがあります。
- 特定電子メール法:広告・宣伝目的のメールやSMSは、原則として事前に同意を得た相手にだけ送れます。送信者名や配信停止の方法の表示も必要です。
過去客リストの管理はExcelで十分?ツールに切り替える基準は?
担当者が少なく、手作業で連絡が回っているうちはExcelで十分です。複数人での共有、連絡履歴の記録、定期的な配信が必要になったら、ツールに切り替える時期です。判断の基準は件数ではなく、「連絡が漏れ始めたかどうか」です。
Excelで回せる状態と、限界が来るサイン
担当者が1人で、リストを自分で見て連絡できるならExcelで問題ありません。次のようなサインが出たら、限界が近い状態です。
- 最終接触日の更新が漏れ、半年以上連絡していない人が増える
- 担当者が辞めたとき、誰に何を話したか分からない
- 定期配信を手作業で送っていて、月末に追客が止まる
ツール選びで確認したい3つの機能
- 外出先でもスマートフォンから簡単に入力できる
- 電話・メール・LINEのやり取りが自動で履歴に残る
- 営業全員が同じ顧客情報を見られる
各ツールの違いは「不動産MAツール比較5選」で比較しています。
過去客リストの活用を社内で定着させるには?
定着させるには、入力のルールを全員でそろえ、マネージャーが毎月数字を確認することです。ルールと確認の場がないと、仕組みは数か月で使われなくなります。
入力ルールと担当を決める
まず、「誰が・いつ・何を入力するか」を決めます。たとえば「通電したら当日中に結果を入力する」といった具体的なルールです。
過去客の担当者も決めておきます。全員で見るリストは、結局誰も連絡しない状態になりがちです。担当が決まっていない過去客は、マネージャーが毎月振り分けます。
マネージャーが毎月確認する3つの数字
- 再接触数:過去客に連絡した件数
- 反応数:返信・通電・資料の閲覧があった件数
- アポ数:訪問査定や来店の約束が取れた件数
再接触数が少ないなら手が回っていない、反応数が少ないなら送る内容を見直すべき、反応はあるのにアポ数が少ないなら提案の仕方や電話のタイミングを見直すべきだと判断できます。
よくある質問
Q不動産会社が、何年も連絡していない売却の過去客に連絡しても大丈夫ですか?
問題ありません。売却の決断に1年以上かかった人も約2割いるため、時間がたってから動き出す人はいます。最初は周辺相場のお知らせなど、売り込みではない連絡から始めます。
Q不動産の過去客には、どのくらいの頻度で連絡すればいいですか?
売却の希望時期と反応によって変えます。時期が近く反応がある人ほど頻度を上げ、時期が未定の人は月1回程度の情報提供で関係を保ちます。目安はステップ2の表と「不動産売却の追客頻度は週何回?」をご覧ください。
Q担当者が退職しても、過去客との関係を保つには?
過去客リストを、個人ではなく会社の資産として管理します。全員が見られる場所にまとめ、連絡の履歴まで残せば、後任も続きから話せます。
過去客リストを、媒介につながる資産に
ALL GRITは、不動産会社向けのMAツールです。一括査定サイトからの反響をLINEのお友だちに変え、反響直後からLINEで自動追客できます。媒介に至らなかったお客様も「連絡が取れる過去客」として残せます。
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執筆者 河野 清博 ギバーテイクオール株式会社 代表取締役CEO 最終更新日:2026年10月22日 |

